現実世界で捕まえて

お昼になると
桜子ちゃんが「お弁当持ってこっち来て」と、会議室に手招き。

「電話番は?」

「電話番は西上係長がいつもやってくれてるでしょう。どしたの?」

「死神係長はデスクでお昼食べるの?」

「死神って……いやピッタリだけどさ。係長はひとり毎日デスクで食べてるでしょう。それより早く話をしなさい」

誰もいないのを見計らい
私は桜子ちゃんと会議室でお弁当を広げた。

桜子ちゃんは私の恋バナに、目をキラキラさせて聞いてくれるはずが、ラストの方では死んだ魚の目になっていた。

「相手は本当に平野課長なの」

「そうだよ」

「うげーっ」

「うげーっ?」

「他の人なら応援するのに」
グチグチ言いながら、私の玉子焼きを盗んで口にする。

「平野課長は優しくていい人だよ」
本日二度目かも。このセリフ。

「留美が傷付くの嫌だもの」

「心配性なんだよ桜子ちゃんは。私は大丈夫」

地味だけどガンコな私の性格を知ってか、桜子ちゃんはそれ以上何も言わなかった。

心配かけてごめんね。

平野課長はいい人だから
桜子ちゃんの誤解だから大丈夫。

微妙な空気を変えようと
私はもうひとつ
大事な話を桜子ちゃんに聞いてみた。

「西上係長をどう思う?」と……。

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