現実世界で捕まえて
すると桜子ちゃんは、私のお弁当を物色しながら楽しそうに答えてくれる。
「背が高くてイケメンで、頭が良くて仕事ができて隙が無くて完璧で、モテ要素いっぱいだけど……」
うんうん。
「あの超ドSっぷりが、人を遠ざける」
やっぱり。そんな存在。
「留美も怖がってるじゃん。経理課長なんて圧倒されてビクビクしてるけど、私は嫌いじゃないんだよねー」
「どうして?」
「ドSだけど間違った事は言ってないもの。敵に回したくないタイプだけどね。そろそろ本社に呼ばれるって噂もあるよ」
「そうなんだ」
予想通りのドSなのね。
「今朝から西上係長に突っかかるね。どしたの?」
「別に、なんでもない」
正直に言っても信じてもらえないからいいよ。
「あーぁ留美の相手が西上係長ならいいのに」
飲んでたお茶を吹き出しそうになってしまった。
「それなら応援するのに」
可愛い口をツンとして桜子ちゃんが私に言う。
「それはない」
否定しながら
さっき資料室で私の頬に触れた
冷たい彼の唇を思い出し
なぜか心がざわめいてしまった。