現実世界で捕まえて

すると桜子ちゃんは、私のお弁当を物色しながら楽しそうに答えてくれる。

「背が高くてイケメンで、頭が良くて仕事ができて隙が無くて完璧で、モテ要素いっぱいだけど……」

うんうん。

「あの超ドSっぷりが、人を遠ざける」

やっぱり。そんな存在。

「留美も怖がってるじゃん。経理課長なんて圧倒されてビクビクしてるけど、私は嫌いじゃないんだよねー」

「どうして?」

「ドSだけど間違った事は言ってないもの。敵に回したくないタイプだけどね。そろそろ本社に呼ばれるって噂もあるよ」

「そうなんだ」
予想通りのドSなのね。

「今朝から西上係長に突っかかるね。どしたの?」

「別に、なんでもない」
正直に言っても信じてもらえないからいいよ。

「あーぁ留美の相手が西上係長ならいいのに」

飲んでたお茶を吹き出しそうになってしまった。

「それなら応援するのに」

可愛い口をツンとして桜子ちゃんが私に言う。

「それはない」

否定しながら
さっき資料室で私の頬に触れた
冷たい彼の唇を思い出し
なぜか心がざわめいてしまった。



< 57 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop