現実世界で捕まえて


死神係長は定時に帰る。

「お早いですね」
給湯室の片付けを終わらせ、自分の席に戻る時すれ違ったので、嫌味ったらしく言ってやると

「ええ。残業は能力のない人間がするものでしょう」

と、サラリと言い残し帰ってしまった。

それも
これから残業しようとしている、営業の人達に丸聞こえ。

すごいよ。さすが怖いものナシの死神さん。

私は席に戻って少し残業。
斜め前には平野課長の姿があるし
残業の時間もまた楽しい。

帰り際には軽く目で合図して微笑んで、今日も一日お疲れ様って互いにいたわる。

あぁいいね。社内恋愛って。
私だけが盛り上がってるだけかもしれないけど。
うん。トキメクよ幸せ。

会社を出て
昨夜、信号待ちで見つけた
アイスブルーのネクタイを売ってる店に笑顔で飛び込む私。

値段は高いけど
平野課長に絶対似合う。
課長も欲しそうだった。

プレゼントにラッピングしてもらおう。

平野課長からさっきLINEが入った。

『次の土曜日。姪っ子の就職祝いを買う予定なんだけど、一緒に選んでくれる?』

そんなLINEに『喜んで』と返事を入れた。

その時渡そうかな。
いや、でもすぐ着けて欲しい。
明日渡そう。

土曜日が楽しみ。



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