現実世界で捕まえて

家に帰ると
完璧な夕食と共に死神さんのお出迎え。

「私の恋の邪魔しないで下さいね」
先に釘を刺しておこう。

「しませんよ」
エプロン姿でサラッと返事をされてしまった。

会社で私の頬にキスしたくせに……って、怒りたかったけど、なぜか怒れなかった。


次の日から

彼はお弁当をふたつ作り、同じ会社へ出社する。
もちろん
行く時間はズラしてもらった。一緒に住んでるなんて話がバレたら一大事だもの。

職場ではもちろん他人。ただの同じ会社の人。

「この領収書では経費は落ちません」

平野課長の机の上に領収書をパラリと落し、死神さんは冷たい目をして去ってゆく。
パラリは無いわー。
叩きつけるより嫌味だし怖い。

そして彼がこっち来ると空気が寒い。

すると平野課長は一瞬マジな目をして、後姿の死神を屈辱の目でにらみつけた気がした。

え?何かイメージ違うんですけど。
大人の男性なら、苦笑いで終わって欲しいんだけど。

私の目の錯覚かなぁ。

ドSな仕事っぷりが本当に似合ってます。

そんな彼はどうでもいいとして。

私はこっそり平野課長にネクタイをプレゼントすると、平野課長は「こんな高い品物もらえない」って遠慮してから「でも俺が返して、留美ちゃんが他のヤツに渡したら嫉妬する」って受けとってくれた。

「ありがとう。大切にする」

「土曜日楽しみにしてます」

そんな恋人同士っぽい会話をオフィスでしながら
ひとりで浮かれる私でした。






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