現実世界で捕まえて
「3つ目のお願いをしたいの」
資料室に入ってすぐ私は死神に頭を下げた。
「桜子ちゃんの彼が事故で重傷で、場所が鹿児島で、間に合わなくて、もしかしたら死んじゃうかもしれなくて……」
説明にならない説明をする私。
桜子ちゃんの取り乱した姿を思い出すと、急に喉元が苦しくなって目から涙がボロボロ出てきた。
「てるちゃんを助けたい。桜子ちゃんに会わせたい」
「意味がよくわかりませんが。桜子さんの彼が鹿児島で事故に合い、危篤で助けたいって話でしょうか?」
私と対照的に死神は冷静だった。
「そうです。お願いします」
「またそんな、くだらない事に使うのですか?」
呆れた声で上から言われる。
「くだらなくない!」
「事故に合ったのは運命です。そして彼は死ぬ運命」
てるちゃんが死んじゃう。
「でも今の私は、運命を変える力を持っている」
「何度も言わせないで下さい。キリがないんですよ。あなたはあと4ヶ月ほどで死ぬんですよ。他人より自分の……」
うるさいっ!
エンドレス説教なんてまっぴらだ!
もうお願いの手順はわかってる。
「神様お願いします」
私は手を組み
本当は空を見上げたかったけど
室内なのでベージュの薄暗い天井を見上げる。
「バカ、やめろ!」
死神の怒鳴り声なんて聞こえない。
「神様お願いします。てるちゃんを助けて下さい。そして桜子ちゃんを鹿児島のてるちゃんの元へ飛ばして会わせてやって」
資料室いっぱいに広がる声を出し、私がお願い事をすると遠くの方から澄んだ鐘の音が届き、死神が舌打ちをする。
お願い
叶ったんだよね。