現実世界で捕まえて

『土曜の夜は美音さんの手作りが食べれる』

『きちんと起きてね。いつも昼まで寝てるんだから』

『誰のせい?休みの日は一緒にベッドでゴロゴロするのが好きなんだろう』

『いやだ亮さんったら』

姪だよね。
親戚の女の子だよね。
ベッドでゴロゴロって?どーゆー意味?

ふたりの楽しそうな笑い声は、ホワイトデーの恋人達そのもの。

『今度の日曜日、お買い物に行きたいわ』

『何が欲しい?買ってあげる』

『いつも買ってもらってるからいい。このバッグだって高かったのに』

『それとお揃いブランドで買おうか』

『別にブランドにこだわらないけど、亮さんがいつもおしゃれで素敵なブランド着てるから、私も合わせようかなーって思うのよ。亮さんが悪い。そのジャケットも素敵』

雑誌に載ってたジャケット
私が買ってあげた。

『早く亮さんと結婚したい』

『常務が俺の父親になるんだ。緊張するなぁ』

結婚?

それじゃ
亮さんと一緒に座ってるのが
お見合いの噂があった本社の常務のお嬢さん?

だって
亮さんはお見合いなんて断ったって。

お見合いしてないって

言ったのに。

「お客様?」
用意されたティラミスを受け取ることなく

私はそこからの記憶がないまま

急に降ってきた
どしゃぶりの雨に濡れながら

家に戻った。
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