現実世界で捕まえて

身体中びしょ濡れになっての帰宅。

玄関でコートも脱げない。
水で貼りついてるし。笑っちゃう。

「丸洗いですか?乾燥してから帰って来て下さい」

なんつーか
全てお見通しなんだね。
それが本当の仕事か。

「身体が冷えましたね。お風呂の用意はできてます」

死神は軽く手を叩くと
私の服も身体も、乾燥機に入ったように乾いてしまった。

さすが。

お礼を言いたいけど
口が開かない。

私はそのままお風呂に直行し
髪も乾かさないでパジャマのまま居間のソファに座る。

「風邪ひきますよ」

死神はパソコンから手を離し、タオルを持って私の髪を拭いてくれた。

また天界の報告書作り?
昼は会社で仕事して、夜は本来のこっちの仕事して
大変だねぇ。

「お風呂で温まりましたか?」

返事ができない。
口をどこかに落してきたかな私。

「今の風邪は怖いですから」

死神が風邪を怖がってるなんて変だよ。

「あと2つ。願い事を有効に自分の為に使って下さい」

長い指が私の髪の中に入って乾きをチェックする。

何でもチェックする人。
職業病。

< 74 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop