現実世界で捕まえて
次の日
『熱が出ました』と、ウソの電話を会社に入れて会社を休む。
月末じゃないし
そんなに仕事も忙しくない。
お茶当番だったかもしれないけれど、いいや。
桜子ちゃんも九州からまだ戻ってないけど、いいや。
お茶ぐらい誰かが出すはず。
私が居なくても
会社は動く。
サボると決めたら余裕で二度寝して、気が付けば10時を過ぎてた。
昨日は泣きすぎて疲れた。
泣くって体力がいるんだね。
赤い目をして寝室を出ると
「おはようございます」
死神がエプロン着けて台所に立っている。
「会社は?」
「休みました」
「なんで?」
「僕はあなたの魂を運ぶためにこの世界に来たんです。下等な仕事をする為ではありません」
なるほど。
会社員の姿は仮の姿だものね。
今日の経理チームはドS係長が休みで、明るくイキイキしてるかな。
想像してクスッと笑うと、死神は安心したように少し口元を緩ませた。
私が落ちつくまで
ずっと抱いててくれたよね
『バカですね』って、優しい声で一言だけ言ってくれた。
他には何も言わなかった。
ありがとう。
「フレンチトーストが焼けました。顔を洗ってらっしゃい」
いい匂いが空腹感を呼び戻す。
晩ご飯食べないで寝ちゃったから。
「それから4つ目の願いを考えましょう」
「4つ目の願い?」
「そうです。どうします?どうやって殺します?」
はいっ?
「虐殺。八つ裂き。爆発。監禁拷問……あっさり殺すより、やっぱりジワジワ生き殺しですよね」
ピンクのフライ返しを持ってさりげなく言う姿は、まぎれもなく死神だった。