現実世界で捕まえて

ズル休みはリフレッシュ休暇。

会社に行くと桜子ちゃんも出社していて、元気な姿を見せてくれていた。
彼氏のてるちゃんも週末に退院して、こっちに戻ってくるようた。

よかった。
桜子ちゃんの元気な笑顔を見ると、3つ目の願いを使ってよかったなって思う。

「土屋さん。大丈夫?無理しないでね」
優しい優しい声で平野課長に言われて「ありがとうございます」ってサラッと返事する私。

その笑顔を見ると
また、だまされそうで怖い……って思っていたら、背筋がザワザワする。
経理の方から冷たい視線が飛んでくる。

私の心を見透かさないで下さい。
油断も隙もない死神だ。

心を読むのだけはやめて欲しいよ。
4つ目のお願いをそれにしようかな。

そんな事を考えながら
昨日休んでいた分の仕事をこなしていると
昼前に、平野課長の姿が席になかった。

ホワイトボードを見てもお出かけはしてない。
社内にいるはず。

話をつけようか。

いくら私がバカでも、このままズルズルは良くない。

丸め込まれるかもしれないけど
常務のお嬢さんの話を聞いてみて

私に対する気持ちも、はっきりと聞きたい。

万が一
私と常務のお嬢さんを同時に好きになって……る、ワケないか。
死神にまた『救いようのないバカ』って言われるな。

平野課長が居そうな、屋上へと繋がる階段の踊り場に行き
バカな私は現実を見るはめになる。

「……合コンは無理だって。彼女に怒られる」

どうやら電話中らしい。
終わるまで待つか、また別の日にしようか。

「違う違う。同じ会社の地味な女じゃなくて、見合い相手の常務の女。おいおい、地味な女は恋人じゃなくて金ヅル。俺の財布」

品のない笑い声が階段下まで響いてる。




< 78 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop