現実世界で捕まえて

「神様お願いです」
足元から流れる風が強風になり、曲がる身体を起こして私は手を合わせる。

「やめろ!」
強風に負けずに目を開くと
彼の身体は半透明になっていた。

消えないで
まだ消えてはダメ。

「お願いします。最後のお願いです」

天井に描いている天使に向かって顔を上げる。

彼が嫌いな天使に最後のお願いをするって、効き目はどうなんだろう。

でもお願いするしかない。

「神様お願いします。私は目の前の死神さんに恋をしてます。彼を人間にして下さい。私は彼と恋に落ちて、最高に幸せな人生を彼と過ごし100まで生きますっ!」

声を振り絞り
心からの願いを部屋いっぱいに叫んだのと

彼の姿が目の前から消えるのと

どちらが早かったのだろう


そして

鐘の音は聞こえなかった。


遅かった?

ダメだった?
無理な内容だった?

無茶な願いとわかってるけど
もうこれしか浮かばなかった。

私の願いが叶ったのか
彼の願いが叶ったのか

誰か教えて下さい。


クルクルとした小さな渦の中に巻かれ
私の身体はふわりと舞い上がり

吐きそうなくらいの目まいと頭痛に襲われて







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