現実世界で捕まえて
考え事をしながら歩いていると
正面から小学生の男の子が歩いて来た。
その子はランドセルを背負いながら猫背気味に歩き、両手がふさがっている。
ん?妙な姿勢だなって思っていたら
その子の進行方向が少し斜めになり、私に向かって歩いてきた。
え?私はゴールで待つコーチじゃないよ。
進行方向違ってるよ。
避けようとしたけど
思ったより男の子の歩くスピードが速く、アッという間に私と衝突した。
「うわっ」って男の子は顔を上げ
スローモーションのようにその子の手からゲーム機が宙に舞う。
歩きゲームか?小学生?
ダメだよ。先生に言いつけるぞ!
男の子は泣きそうな顔で宙を舞うゲーム機を追いかけ、車道へ飛び出そうとする。
あぶないっ!
反射的に私も足を車道に向けると
ゲーム機は黒い皮の手袋に、すっぽり高い位置で収まってしまった。
「死にたいなら、車道に捨てるけど」
真っ黒なチェスターコートを着た背の高い男が、冷たい声で男の子に告げた。
男の子は首をブンブンと強く横に振り、小さな声で「死にたくない」って男を見上げて怖がる。
「死にたくないなら二度と歩きゲームはするな。約束を破ってごらん。僕はどんな手を使ってでも君を探して、君の人生をつぶしてやる」
小学生に言うセリフか?
完璧に怖がってますけど。
「約束しろ」
男はそう言ってゲーム機を男の子に戻すと、男の子は涙目で「約束します」って言ってから走って逃げて行く。
あーぁ
本当に人間とは思えませんよ。
しにが……いいえ。西上係長。