陽だまりのなかの僕ら
「たっだいまー!」
ガサゴソという物音と共に、隆貴さんと藍実が帰ってきた。
おうちゃんと私は勉強道具を片付け、食材の準備にかかる。
「うわ、あたしこれ切れない。え?これも無理!」
ぎゃんぎゃんうるさい藍実をよそに、隆貴さんとおうちゃんは淡々と作業をこなしていた。
「あっ、だめだよ藍実。玉ねぎは―――・・・」
私もそれに負けじと、藍実に懸命に野菜の切り方を教えていた。
玉ねぎが目にしみる。
「桜輔。俺が卵割っとくから、あっちのお嬢さん方見てあげて。詩麻ちゃんが大変そう。」
隆貴さんが私たちに視線を送りながら、卵を取り出して言った。
おうちゃんは黙って頷くと、私たちに近寄り、何故か藍実ではなく私の後ろに回って、手首を掴む。
「えっ、おうちゃん、私はある程度できるから―――・・・」
「詩麻にもちょっと教えてあげたいから。」
少し掠れた、でも心地よい低い声で耳元に囁かれる。
「あ・・・そ、そっか・・・」
何なんだろ、この胸の奥の・・・
「・・・まず脇しめて。」
おうちゃんはそう囁いて、私の手首を握ったまま、すっと腕を後ろに下げる。
私が、脇を締めた形になった。
「・・・お、うちゃん。わたしもう、大丈夫だから・・・」
これ以上は、心臓に悪い。なんとなく。