陽だまりのなかの僕ら
「隆貴さん、なにか手伝うよ。」
私はフライパンを眺めながら、いつもより少し高い声で言った。
隆貴さんは私の方を見て、
「あ、じゃあ。フライパンを温めておいてくれるかな。」
無造作に置かれたフライパンを指す。
「うん、わかった」
私はフライパンを手に取り、少しの間光沢を眺める。
そしてすぐにフライパンを温め始めた。
「あーちょっとちょっと!そこあたしが切りたい!」
「はー・・・。どうせ切るなら全部切りなよ。」
「はぁ?か弱い乙女になんでそんな事言うの?薄情ね!」
「藍実はさ、頭のネジ5本くらいぶっ飛んだんじゃないの?」
フライパンを温めながら、隆貴さんの作業を見ていた私は、藍実たちを振り返る。
楽しそう・・・
そう思って、ちくりと胸が痛む。
あれ、変なの。
「なんでこうっ、―――うまくっ―――切れない―――のよっ!」
「それは藍実のやり方が下手すぎだから。」
「はぁ?!私を馬鹿にするのは100万年早いわよこのシスコン!」
「俺がいつシスコンだって言ったよ?」
―――ああ、シスコン、ね。
おうちゃんの妹みたいなのなんて、私以外いない。
なんだか、居心地悪いなぁ・・・。
私が無意識にため息をつくと、隆貴さんが私を覗き込んで、心配そうな声で言った。
「大丈夫?暑い?」
「あっ、だっ、大丈夫だから!」
ち、近いです!
「―――そっか。夏だから、熱中症だったりしたら大変。」
整いすぎた顔が、ずいと近づく。
「あはは、大丈夫だよ。私身体だけは丈夫だからさ。」
そのまま、ピースして、隆貴さんに笑って見せた。
隆貴さんはちょっと驚いたような顔をして、ぷくくっと顔を合わせて笑った。
「―――・・・ちょっとごめんね。」
急に真剣な顔になり、私のおでこに手を伸ばした隆貴さん。
「・・・っえ、どうかしましたか・・・」
そのまま、私のおでこに隆貴さんのしなやかな手のひらが、ぺた、とくっつく。
ほんのり冷たくて、気持ちがいい。
私は感情のままに目を瞑った。