陽だまりのなかの僕ら
「隆貴、そこ退いて。炒めるから。」
「おうちゃん・・・」
おうちゃんが、私たちの間に割って入った。
「はやく隆貴も卵やりなよ。」
いつもより低い声で、おうちゃんはそう言った。
どうしたんだろう?
普段こんなこと言わないのに。
ちょっと心配になって、すかさず隣に。
「・・・おうちゃん?私も何か手伝うよ。」
私が優しくそう言うと、おうちゃんは驚いたように、同時に嬉しそうに微笑んだ。
「うん、手伝って。」
「・・・・・・。」
ときどき思う。
なんで、おうちゃんは私に優しくしてくれるのか。
なんで、急に怒りだすのか。
謎ばっかり。
「・・・はあ・・・」
ため息をついて、冷蔵庫に向かおうとする。
すると、ぐいっと肩を後ろに引かれた。
振り返ると・・・
「大丈夫?詩麻、調子悪いの?」
「え・・・」
急に近づくおうちゃんの綺麗な顔。
透き通った瞳、柔らかい髪の毛。
すべてが美しい。
「・・・大丈夫だよ。」
・・・不意打ちで甘え出す、おうちゃん。
これも、幼馴染みだから、見られる姿。
・・・わたしたちは・・・
「ほんとに?」
すっと、おうちゃんの手が私のおでこに。
「っ・・・」
思わず、反応してしまう。
しばらくしておうちゃんは、再び機嫌を悪くしてしまったみたいで。
なんでまた、おでこで?
・・・私のおでこに恨みでもあるのかな?
そう思って、おでこをさすってみる。
・・・なにか、あるわけ・・・ない、よね。
・・・ちょっと、悔しいかも。
わたしばっかり、ドギマギさせられて。
仕返し、したいなぁ。
視線を泳がせて、ぴたり、とおうちゃんの髪の毛にターゲットを絞り。
すっと手を伸ばす。
そして、柔らかい髪の毛をくしゃくしゃっとやってみせる。
「・・・?!」
唐突に起こった出来事に、頭が追いつかない様子のおうちゃん。大きく目を見開いて、こっちを見てる。私は思わず吹き出した。
「ケホッ・・・な、・・・?」
「仕返しだよー!」
そう自慢げに言った後に、両手でVサイン。
すると、おうちゃんの頬がほんのり赤に染まり、下唇をかむ。
「そ、そっか。」
「・・・?」
おうちゃんはそのまま、ふいっとそっぽを向いてしまった。