陽だまりのなかの僕ら
「失礼しましたー」
『カタン』
職員室はクーラーがかかっていて、とても涼しかった分、外に出た瞬間の絶望は大きかった。
ドアを閉めて、振り返り、まずほうっとため息をつく。
ひょいっと汗を拭い、プリントを見つめた。
次は、このプリントを教室まで・・・
私の名前は、七瀬 詩麻(ななせしま)。
高校二年生、
2ーAの委員長です。
私はとにかく人が嫌がりそうな仕事や役割を全部請け負って、役立つのが、人の笑顔を見るのが大好き。・・・なのかな。
それに、私はこれからもずっとこれを続けていくことになるだろう。
それが、私の唯一の居場所、だから。
ぐっと、胸が苦しくなったのは、きっと暑さのせい。
職員室から少し離れて、走る準備。
したたる汗を拭い、長い廊下を見据えて、一呼吸おいて。
3
2
1
ダッシュ!
夏の匂い、音、感覚。
すべてが、私の体に吸い込まれる。
これが、私の本当の至福。
そっと目を瞑って、睫毛でカーテンをかける。
胸がぎゅっと締め付ける瞬間。
陽だまりが綺麗。
窓から吹き込む夏の生暖かい風でさえも、美しい。
廊下にわたしだけの足音が響いた。
そう、ずっとこの瞬間を、胸に留めておきたい―――・・・
私がそんな雰囲気に浸っていると、
突然、ぱふんと、優しい何かに包まれた。
「・・・しーま。」
声色にも滲み出る、その、優しさと強さ。
「おうちゃん!」
私はほんの少しだけ、きゅっと背伸びをした。
・・・なんでかは、わからないけど。