陽だまりのなかの僕ら


「で?どうするの?行くの?行かないの?」

私はうーんと頭を抱えた。

「蓮君なんて彼女いるでしょ、きっと。だから、遊びなんじゃないかなって。」

私の意見に、藍実も頷く。

「でもさ、蓮を見てみなさいよ。みて、あの顔。」


私は藍実の指示通り、チラッと蓮君を見てみる。
偶然、目が合った。

するといつも騒がしい蓮君が、顔を真っ赤にして本を読み始めた。

題名は・・・


『女の子の気持ち-心理学‐』


「ふふっ・・・」

よっぽど緊張してるんだ・・・
こんな状況で笑うのはきっと不謹慎だけど、羽目の外し方が可愛い・・・

「・・・藍実、わたし、行ってあげることにする。だって、折角手紙くれたんだもん。きちんと断らなきゃ。」

私が言うと、藍実は目を丸くして口をぽかんと開けながら、言った。

「あんたってどこまで行っても純情なのね。優しすぎて目の毒ね。」

まるでおばさんと世間話をしているみたいな、そんな気持ちになった。

そして藍実がため息をつく。

「・・・じゃあ行きなさいよ。今度は前みたいに変なヤツじゃないといいわね。」

「・・・うん。そうだね。」


そう、前回の告白は、本当に酷かった。

相手はもう、私が自分を好きだって勘違いしてて。
それで急に、抱きしめられそうになって。

とりあえず先生に言って、停学処分になって、少し安心した。

以来、それがトラウマで何ヶ月かはおうちゃんと隆貴以外の男の人とはしゃべるのも辛くなってしまうくらいだった。


それは本当に、嫌な思い出。





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