陽だまりのなかの僕ら


「は・・・ケホッ・・・は・・・うゎっ」

ふいに、誰かにぶつかった。

あはは・・・変な声出た・・・。
この際それはもうどうだっていい。

階段を上がった踊り場で、私は倒れこんだ。

「・・・あれ、詩麻・・・?」

「・・・?壮・・・」


そこには、段ボールをいくつも抱え、Yシャツの袖を捲った壮がいた。
壮はそっとかがみ込み、私に筋張った綺麗な手をさしだした。

「大丈夫?立てる?」

「あ・・・う、うん。」

この状況で、手をとらないわけにはいかないだろうな・・・。

そっと手をとると、軽々と私を立ち上がらせてくれた。
そして何故か、壮の胸の中に私はすっぽりおさまって。

「ありがとう、壮・・・それで、私やりたいことがあるから・・・」

「・・・本当は、やりたいことなんてないでしょ。ただ、逃げてきた。」

心臓がとびはねた。

「ち・・・違うから・・・もう、いいよね。」

「そうやっていつもごまかす。」

「ご、ごまかしてなんかない、から。」

目をぎゅっと瞑って、壮の心臓の音だけ感じる。・・・ドクンドクンと、だんだん心臓の音がはやくなっていく。

・・・緊張してる・・・?


「はぁ・・・」
ふいに、壮が深いため息をつく。

「俺はね、詩麻を心配してるんだよ。・・・いつも、無理ばっかりで。・・・俺は・・・」

握られた手首に、ぎゅっと力が入れられた。


「・・・・・・ごめん。ちょっと、言いすぎた。・・・じゃあね。もう、行っていいよ。」

ダンボールを持ち直して、壮はそのまま足早に階段を降りて行ってしまった。

私はその場にぽかんと立ち尽くす。

「俺は・・・なんだろ?」




階段の踊り場には、柔らかくて少しだけ冷たい、夏の風が吹いていた。


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