陽だまりのなかの僕ら


「詩麻ーー!!早く降りてきてよー!!!あたし帰って寝るんだからー!」


階段の下から呼ばれて、はっと我に返る。


「う、うーん!」

少し声が裏返ったけど、気にしない。
肩にかけたスクールバッグを握り直し、藍実のいる方へ向かった。

玄関の方へ向かうと、ローファーをに持った藍実が私を待っていた。
それも、ちょっと不機嫌そうな顔で。

不思議に思った私は、

「どうしたの?」


「あんたと、帰りたい人がいるの、あたしと、もうひとり。」

それだけ言うと、ローファーを玄関の石畳へ叩きつける藍実。

なにがあったんだろ。

藍実がなんだか変な方向を向いてるから、その視線を追うと・・・

「あれ、壮・・・」

少し照れた感じの壮が、頭をかきながら苦笑いをしていた。
なんか、変なことでも言ったのかな?

「んーとね、一緒に、帰ろうと思ったんだけど・・・」

壮が申し訳なさそうに藍実の方を見ると、藍実が怒ったように言った。

「もういい!あたし、帰る!!!」

そして、藍実はずんずんと玄関の外へ。

「あ、藍実・・・!!!」

追いかけようと足を踏み出すと、壮に止められ、それ以上進めなくなってしまった。
壮を見ると、「そっとしとけば平気だよ。」と優しく私をなだめた。


「宿題、教えてもらいたいんだ。」

唐突に言う、壮。

「宿題・・・?壮は、私なんか居なくても、自分で解けるでしょう?」

壮はあははっと笑った。

「ううん、今回の問題は特に難しそう!」

無邪気に笑いながら、私を見つめる壮は、とっても楽しそう。
なんだか、弄ばれてる気分で悔しい・・・。

「・・・わかった、見てあげるから・・・」

何を言っても引いてくれそうにないから、私は壮の手を引っ張った。

「じゃあ、私の家でいい?」

「やだ。俺の家に来て。遠くないからいいでしょ。」

「・・・え?」

掴んでいた手を離し、私は壮を振り返る。
おうちゃんと隆貴以外の、男の子の家なんて、行ったことない。

私の心臓が、激しく鳴った。

「・・・俺の家。はい、決定。」

今度は逆に、壮に手を握られる。


朝も、帰りも一緒・・・

これって、恋人みたいな・・・

私はふるふると首を振り、壮の背中を見つめた。

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