陽だまりのなかの僕ら

街の灯りが、きらきらしていた。

・・・そっか、私の家って、丘にあったんだっけ。

「・・・ふ、初めて見た、みたいな顔してる。」
ふいにおうちゃんが隣で笑って、心臓がぎゅうっと締めつけられる気分になった。

さらさらとおうちゃんの前髪が揺れて、思わず見惚れてしまった。
おうちゃんが、振り向きざまにぽつり。

「かわいいよ。」

「え?」

唐突に、聞き慣れもしない言葉を投げかけられて。

「・・・詩麻は、かわいい。」

そう言って、おうちゃんはまた柔らかく笑う。

きゅうっと、おうちゃんが私の手を握るのと一緒に、私の心臓も、きゅうっとなった。

「あはは、冗談やめてよおうちゃん。」

私が軽く流すと、おうちゃんはそれから少しの間、黙り込んでしまった。

けれどやがて、喋り出す。

「・・・冗談、言うの好きじゃないよ。」

柔らかい笑顔のまま、だけどほんのちょっとだけ表情を変えて、おうちゃんはそっと言った。

私には、それが答えのような気がした。

きゅ、と握られた手に力を込める。

無視されたか、と思ったけど、やんわりと優しく握り返してくれたことに気付いた。

それだけで、胸がじんわりと暖かくなる。

魔法、みたいだな。




< 85 / 107 >

この作品をシェア

pagetop