陽だまりのなかの僕ら
ちら、とおうちゃんを見る。
髪の毛が動作に合わせて、ふわふわと上下した。
それが何だかとても綺麗に思えて、ちょっと顔をほころばせる。
おうちゃんの背中は広くて、それでいてなんだか、か細くもあった。
・・・なんか、おうちゃんの呼吸が少し荒いのは、気のせいかな。
「連れて行きたいとこがあるんだ、それも、詩麻だけを。」
ふいに、おうちゃんが唇から言葉を零した。
ひとつひとつ、大切な宝石でもあるかのように、言葉が輝く。
「連れていきたいとこ?それってどこ?」
「行けばわかる、きっと。」
おうちゃんが私の手をクイッと引く。
やがて、路地裏に出た。
猫とか、そういう動物が通りそうな、なんだか入り組んだところ。
ダンボールが積んであったり、水たまりがいくつもあったり、換気扇の音がガラガラとうるさかったり。
どれもこれも、もう何度も見たような、そんな気持ちになった。
いや、本当に見ているのかもしれない。
長い髪の毛がいろいろなところから吹き込む風になびく。
私が家から出て、もう40分くらいたっただろうか。とうとう私はしびれを切らしてちょっと強く言った。
「おうちゃん、いったいどこに行きたいの?」
「ん、あともうちょっとで分かる。憶えてるかな、詩麻は。」
憶えてるといいね、っておうちゃんが笑った。
今も昔も変わらない、どこまでもマイペースなんだな、おうちゃんは。
私はひとりでうんうん、と頷いていた。