陽だまりのなかの僕ら
だめだ。
ここを抜けたら、君がいなくなってしまう気がする。
思い出が、全部弾け飛んでしまうような。
懐かしい記憶も、全部。
君との大切な思い出も、全部。
「・・・だめっ!」
トンネルを抜けようとするおうちゃんを、私は手を引っ張って引き止めた。
驚いた様子のおうちゃんが、私を振り返る。
「どうしたの、早く行こうよ」
おうちゃんを見ようとするけど、暗くてよく見えない。
でも、おうちゃんの白い肌と、深い緑の瞳だけは、しっかりと見据えた。
そして、ぽつり。
「ここを通ったら、きっとおうちゃんが消えてしまうような気がするの。・・・だからっ・・・」
ふいに、手をぐいっと引っ張られ、引き寄せられる。
そう、抱きしめられたんだ。
「・・・大丈夫。俺は、消えないよ。・・・俺は、ずっと詩麻のそばにいる。」
おうちゃんが、さらりと私の髪の毛をなでる。
息遣いとか、そういうのまで、全部。
耳元で低く響いた。心地よい、唇から零れる一音一音。
「・・・・・・」
私は目を瞑って頷いた。
「・・・うん。わかった」
私もやんわり、抱き締め返した。