陽だまりのなかの僕ら
「・・・ケホッ・・・ここの奥。たぶん、秘密基地みたいな・・・」
「秘密基地?」
私が聞くと、おうちゃんはこくんと頷いた。
「・・・頻繁に行ってたけど、ある日を境にぱったり行かなくなった。」
そう、だったっけ。
私はひとり首を傾げて、あたりを見回した。
「・・・そういう時って、あるでしょ。だから仕方のないことだったんだよ。思春期なら、なおさら。」
低く、でもどこまでも響き渡るような声で、そっとおうちゃんが言った。
胸が、苦しくなった。
「詩麻は、憶えてないよね。小3だもん、仕方ないよ。」
「・・・憶えてられたらよかったのに。」
私が言うと、おうちゃんが私を横目で見た。
「・・・憶えてないほうがいいことも、たくさんあるんだよ。」
胸が、ざわついた。
おうちゃんのこんなに低くて強い言葉は、おそらく初めて聞いたかもしれない。
ドクン、と低く胸が鳴った。