陽だまりのなかの僕ら
―――カシャ
雑草と雑草の擦れ合う音がして、やがてちょっと開けた場所に出た。
でも、周りは雑草に囲まれていて、丸くて小さい芝生の広場みたいだった。
古ぼけた本とか、ダンボールとか、缶とか。
そういうものが、ころんと、無造作に置かれていた。
「・・・あのときのままだ・・・。」
ふいに、おうちゃんが意味のわからない事をつぶやく。
私はおうちゃんのほうを見て、聞いた。
「あのとき、って・・・?」
「あ、うん。えっとね」
本を一冊拾って、ぱんぱん、と本についた土を払いながら、おうちゃんが私のほうを見た。
いつのまにか、握られた手が離されていることに気づく。
「・・・さっき、ある日を境に、ぱったり行かなくなった、って言ったでしょ?」
うん、と私は頷いた。
「その"ある日"のままだなって。」
おうちゃんが本をぱらぱらと捲るたび、小さな風がおうちゃんの眉間くらいまで伸びた前髪を弄んでいった。
「この本も、そこに置かれたビー玉とかも、その辺に集めてあるダンボールの山も。・・・たしかここはベッドだーとか言って遊んでたな」
懐かしそうに、でもどこか寂しそうにおうちゃんが笑った。
ふいに、おうちゃんが振り返る。
「ほんとうに、憶えてない?」
唐突に、おうちゃんの唇から零れた言葉。
私は思わずごくりと息を呑んだ。
そして、かすかに首を振って、笑う。
「うん、ほんとに憶えてないんだ。・・・なんでだろうね、自分でもわからないんだ。」
自分の声が、まるで自分の声じゃないみたいに。
すごく、不自然な感じがした。