陽だまりのなかの僕ら


「・・・暗いの、嫌い?」

「・・・う、うん。当たり前だよ。暗いの怖くない人なんていない。」

私はほぼ、おうちゃんに抱きつくみたいにして、くっついていた。


普通の男の子なら嫌がるだろうけど、おうちゃんは笑って私と繋いだ手をきゅ、と握り返してくれる。

「小さい頃は、ひとりでどんどん変なとこ行っちゃってたのにね。」

「・・・そう、だっけ?」

「うん、泥だらけで俺に抱きついてきたりさー」

ぷくく、とおうちゃんが笑った。

「あ、もうすぐ着くよ。」

「それ、何回聞いたかわからないよ。」

私が言うと、おうちゃんはまた笑った。

そうこうしているうちに、開けたところに出た。



そこは、丘になっていて、目の前には少し大きな湖があり、周りは森で囲まれていた。

「ここ・・・」

「俺が見つけた。隆貴と、大喧嘩した日。あれがたぶん、最初で最後の、大喧嘩。」

すっと指を指す。

丘の芝生を踏んで、おうちゃんが丘のふちといえばいいのか、もうすぐ下は湖というところに腰掛け、あしをぷらぷらさせた。

やがて、私を振り返る。

「おいで。」

< 97 / 107 >

この作品をシェア

pagetop