ぼっちでも


スーパーにたどり着き、一番最初に目についたのは野菜売り場。そこで一際目を引いた真っ赤なトマトを手に取って見る。

新鮮なそれはそのままサラダにした方が美味しそうだ。けど、ふと思った。

誰がこのトマトを食べるの??

今日だって多分彼の帰りは遅いだろう。そんな彼が果たして私の作った夕食を食べる事はあるのだろうか?今までだって彼は一口も口を付けてない。それはこれからだって変わらない様な気がする。だったら、夕食なんて作る意味ないんじゃあないかな?

そんな考えに辿り着いてしまったから、私は手にしたトマトをゆっくりと元の位置に戻した。

食べられないまま、下手したらごみ箱行きになるのなら買わない方がいい。料理だって作らない方がいい。

それが分かっているのに、まだ私は夢を捨てきれていない。

だってまだまだ私達は先が長いのだ。ずーっとこのままなんてありえない。「もしかしたら…」なんて考えてしまうのは仕方のない事なのかもしれない。



< 21 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop