ぼっちでも


時計の針はもう真上まで来ていて、お腹も何となく空いて来たので私はキッチンへと降り立った。

結婚前と変わらないこの場所に、私はほっとため息を溢した。

冷蔵庫を開け中身を漁る。が、不在がちな両親は家では滅多に食事を取ることはなく、だから当たり前に冷蔵庫の中身は空っぽ。あるのはビールやらお酒やらの飲み物類。

私がこの家を出てからはここは殆ど使われていない。そう感じ取れてしまうから、何となく悲しい。


「あら、桃、何でいるの?」


冷蔵庫の物色を諦め戸棚に手を掛けた時、ふと背後から声を掛けられた。その声にさっと振り向くと訝しげに私を見つめる母親の姿があった。


「お母さん……」

「どうしたの?なんであんたがここに居るの?」

「………」


ああやっぱり、ここも私の居場所じゃあないんだ。母親の言葉を聞きそう感じた。そう思ったら戸棚に掛けた手はだらんと下に下がった。そしてなんとも得体の知れない悲しみが私全体を包み込み、私はシュンと俯いた。

「な、なんで泣いてるの桃。もしかして、春臣(はるおみ)くんと何かあったの?」

「………」


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