ぼっちでも
急に涙を見せたからか、それとも、今まで母親の前で涙なんて見せた事がなかったからか、母親の態度はみるみる内に変わった。
いつもなら私になんて構わずに自分の事ばかりな人なのに。
そんな母親は私にゆっくりと近付き、ゆっくりと私の肩に手を回した。
「ちょっと、落ち着きなさい。お茶にでもしましょうか」
「………」
◇◇◇
カチャリ、テーブルの上にカップが置かれる音がして、それを合図に私の目線はゆっくりと真っ直ぐに目の前に座る母親に注がれる。
母親は優雅にテーブルに置いたカップを掴み、上品に口へ運ぶ。
正直、今から何が始まるのか分からない。親子なのに、この人が何を考えているのかも分からない。
それもかなり考えもんだと思うけど、仕方ない事なんだと思う。
紅茶を一口啜った母親は、カップをおもむろにテーブルに置くと私をじっくりと見つめた。そして口を開いた。
「何があったの?春臣くんはこの事を知ってるの?」