この青空が溶けて見えなくなる前に。
「こんな想い知らなきゃよかった、なんてことないんだよ。
兄貴を好きになったから、恋をしたから今の希子があるんだし。
でもそれに気付いたのに今何も行動しなかったら、また希子は兄貴を好きになる前の希子に戻っちゃうよ。
何年も何年も想ってた気持ちが無駄になっちゃうよ」
大ちゃんを好きになる前の私に戻ってしまう?
何年も何年も想ってた気持ちが無駄になってしまう?
そうなってしまうのは必然で、目を背けられないことだって分かってるのに友里亜は私に何をしろと言っているのか。
私はどうすればいいの?
小首を傾げて友里亜を見れば、友里亜は困ったように笑った。
「…簡単に言えば、後悔の無いように前に進みなさいってこと」
もう大丈夫そうだから行くね。
友里亜はそう言って私の肩に軽く手を置くと、ベランダから自分の部屋に戻っていった。
後悔の無いように前に進む…
友里亜が見えなくなったベランダをしばらく見つめ、やがて膝の上に置かれた手を力強く握った。
「…前に……進まないと、ね…」