この青空が溶けて見えなくなる前に。
私が大ちゃんに背中を向けたことで、静かになった。
聞こえるのは部活動をする生徒の声と風の音だけ。
ちゃんと言わないといけないのに、言葉が出てこない。
前に進むために伝えるってそう決めて大ちゃんをここに呼んだのに。
「…彼女さんのこと幸せにしてあげるんだよ?」
「…あぁ」
「…悲しませたりしたら私が一発殴りに行くからね?」
「…そうならないようにするよ」
「…孫が生まれたら見に行くから」
「…お前の孫じゃないから」
一番言いたいことが出てこない。
もう喉元まで言葉が出かかっているのに、込み上げる熱い感情が塞き止めてしまっている。
「…そろそろ行かないと。
皆がお見送りしてくれんだって」
ガチャ
ドアが開く音がした。
大ちゃんが行ってしまう。