君と秘密のラブレッスン



「つぐみ!何してんの、早く!!」


呆れと焦りの交じったような声で急かされながら、私は慌てて鞄を肩にかけると、ぱたぱたと部屋を出る。

ガチャン、とドアが閉まると同時に鍵がかかったのがわかった。



「もー、今日もギリギリだよ!つぐみはどうしたら早起きが出来るようになるの?」


部屋の外で私を待ってくれていたため息交じりの新菜の言葉に、私はごめんごめん、と苦笑を零した。



私の朝の時間は、戦争だ。

いつもギリギリに起きて、朝の支度を超特急で済ませて朝食に向かう。

とにかくスピード勝負の私の朝の日常に、同室の彼女には毎日呆れられてばかりだ。


彼女の隣を歩くとふんわり香る、優しいシャボンのような香りに癒される。

女子力の違いに毎日感服させられているけど、私には到底彼女のようにはなれそうにない。


同室の彼女──、白藤新菜(しらふじ にいな)は寮のルームメイトであり、一番の友達でもある。

私より少し高い身長は、160センチを少し超えたくらい。

サラサラの黒髪はいつも器用にアレンジされていて、今日は緩く巻いてサイドにひとつにまとめられている。

奥二重の目がキライ、と言っていつも二重になるべく努力を重ねている新菜だけど、私は彼女の少しだけつりがちな涼しげな目元が好き。

だから、今のままでいいのになぁ、なんてこっそり思っているのだけど、口にはしないことにしている。

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