A
気持ちも少しはおさまり、ふと目を開けると、さっきまであった惨劇の形跡は跡形もなく消えていた。
最初と同じ、暗闇。
今はそれが怖かった。
怖くて、寒かった。
「さむい・・・よぅ・・・」
涙でぐしゃぐしゃになっているであろう、顔を袖でごしごし拭いて、ふらふらと私は立ち上がった。
どうして、忘れてたんだろう。
忘れられるはずがないのに。
こんな大事な事、普通は忘れない。
じゃあ・・・どうして・・・??
『さぁ、もうお戻りなさい』
突然、低い声が響いた。
「っ!?誰っ!?」
私が慌てていると、声の主はクックッと笑った。
『そのうち、きっと会えますよ』
『さぁ、戻るのです。お友達がおまちですよ』
え・・・??とも、だ・・・・ち・・??
そんな訳、無いよ。だって澪は・・・
そんなことを考えながら、私は遠退く意識の中、暗闇の向こうに人影を見たような気がした。