もっと、キスして




まあこんだけ生きてきたら自分の顔が並外れてることぐらい分かってくる。


街歩いてたら必ず声かけられるし、

中学の頃は告白の嵐だし。


………親に褒められるのなんか外見だけだし。



こんなののどこがいいかなんてさっぱり分かんないんだけど。



だけど、この顔に生まれてよかったって思えたことは一度だってない。


まして、“瀬尾凛”として──…“私”として生まれてきたことをよかったなんて思えない。


思えるはずがない。




「凛~、手とまってんぞ。」


裏で品出しをしてたらしのみんに注意された。


「ねえしのみん。

またしのみん家行かせてね。」


「おー。いつでも来いや。」


しのみんは妻子持ちで。

しのみんの見た目こそ普通だけど奥さんであるハナちゃんはすごく綺麗で。


娘の愛ちゃんも息子の優太くんもお母さん似(若干しのみん似)のめちゃくちゃいい子。


「しのみんって何歳なんだっけ。」


「あー?そんなこと聞いてどうすんだよ。

今年で…28?」


「別に。愛ちゃんと優太くんのこと考えてたら気になっただけだし。」


28で5歳の息子さんと3歳の娘さんいてめっちゃ可愛い奥さんいて店長やってるって。


なかなかすごい人なんじゃないかと思えてきた。


まあしのみんはしのみんだしどんだけすごくても興味無いけどね。


「品出し終わったらちょっとだけ2人で店よろしくな。

すぐ帰ってくっから。」


「りょ」


「ギャル語うぜえ」


笑いながら頭をくしゃくしゃーってしてくるしのみん。


タメまで許してんだからあと何喋っても一緒だよ。


しかもギャル語じゃないし。




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