もっと、キスして
週末はすぐやってくる。
何着ていこうかなって考えてる自分にびっくりする。
外見や持ち物には気をつけとかないとお金ないんだなあって思われそうだから、
服やアクセは貧乏のくせにたくさん持ってるんだよね。
自分のお金なんだからなにに使おうが勝手だし。
お洒落も好きだからそこに妥協したくないし。
だいぶ暖かくなってきた4月の半ば。
「これかな~。」
あまり気合いれましたって感じになるのも嫌だし。
女の人の顔が薄く細かいドット絵でかかれたTシャツに、
紺のスキニーパンツ。
Tシャツはインして黒のロングカーデを羽織った。
ちょっと袖が長めだから手のひら隠れるのが割とお気に入りなんだよね。
スニーカーを履いて家を出る。
こんなにワクワクするのいつぶりかな。
小学生が遠足行く日ぐらいワクワクしてる。
「しのみんおっはー」
「はよー。…なんか雰囲気違わね?」
「違わないから。」
まあいつも上下ジャージの靴クロックスでバイト来てるから雰囲気違うのは当たり前かもしれないけど。
しのみんがそれに気づくとか私普段どんだけひどい格好してるんだろう…。
ちょっと反省しなきゃなあ。
「凛…結婚考えた彼氏でもできた?」
あとから出勤してきた楓にはそんなことを言われてからかわれる。
「何言ってんの意味わかんない。」
「メイクいつもよりしっかりやってんじゃん。
アタシの目は誤魔化せねえぞ~?」
この女鋭いな。
まるで二次会まで行っためんどくさいおじさんみたいにしつこく絡まれた。
「もー。だから友達と出かけるだけだってば。うざい」
「ついこの前
『今日彼氏とデートしたまんま来たからちょー疲れてんだよね』
ってほぼノーメイクのクソラフな格好で言ってたあの瀬尾凛とは思えない変わりようねアンタは。
どういう風の吹き回ししたらそうなんの。」
「そういう時期もあったね。」
あの彼氏は好きじゃなかった。
すっごいしつこくて一回付き合ってデートしたらそれだけでいいからとか言ってくるから
付き合ってたしデートしてあげただけ。