雪華
しばし俺に魅入っていた娘が、少し微笑んだようだ。
浅右衛門、もしかして今日の最後は娘だって知ってたのか?
娘に合わせて、俺を用意したかのようだ。
まぁ娘が満足してくれりゃ、それでいいさ。
安心しなよ、俺はその辺の鈍らとは違うぜ。
お前さんを、一瞬であっちに送り届けてやる。
その俺の言葉に応えるように、娘の頬に赤みが差し、安心したような顔になった。
浅右衛門に一礼し、娘が上体を倒した。
浅右衛門、しくじるなよ。
俺がこいつを、一番綺麗に送ってやるんだからな。
しん、と静まり返った一刹那、浅右衛門が俺を振り下ろした。
真っ白な土壇場に、ぱっと緋色の華が咲いた。
*****終わり*****