つなげない手
「あっ!!
雛、こっちだよ」
来たこともない道。
初めて歩くこの住宅街。
曲がり角がいくつもいくつもあるから
私は何度も違う道を曲がりかけた。
「雛は絶対
迷子になるね。」
お母さんは不安そうに
頷いている。
そこは
否定するものじゃない?
「それに比べて...
瑞穂ちゃんはしっかりしてて。
雛をよろしくね?」
「任してくださいよ」
瑞穂は幼なじみ。
うん、しっかりしている。
「そんな...
雛ちゃんみたいに
素直だと嬉しいんだけど。」
「まぁーまー!?」
気持ちのいい天気。
うちらが今向かっているのは
[区立山並中学校]。
4月7日、
今日は入学式。
シワのない制服を着た
私と瑞穂の晴れ舞台。
もちろん、
他の一年生も。
緊張もあるけど
期待の方が大きい。
友達ができるかとか
担任は優しいかとか。
「良かった。
時間通りに着けたね」
瑞穂の掛け声で
一行はぴたりと止まった。
華やかに飾ってある校門には
[ようこそ山並中へ]という看板が
でかでかと置いてあった。