ゴーストラバー
1*夢うつつ

雨上がり。炎天下の照り返しが酷くむし暑さを増していた午後。

隣の軒先に白い影を見た。

この季節特有のものか?
ぬぼっとしたその影に目を凝らすとそれはこちらに笑いかけながら手を振り返してくる。

正体は隣の昌也兄ちゃんだった。

「マー兄、いつ戻ってきたん?」

見知った懐かしい顔に驚いて聞いた。聞きながらびっくりと同時に淡い思いが甦る。

初恋の味ってやっぱり甘酸っぱいや。

「マー兄、今、東京で何やってんの?」

「ん…」

「何しに帰って来たの? 仕事は休み?」

「ん…」

何聞いても“ん…”しか返ってこん。何だか表情が暗くて心配になった。

「……どしたん?」

マー兄ちゃんは間を置いて答えた。

「………逢いにきた」


「………?」

「夏希に逢いにきた。ずっと逢いたくて…やっと逢いにきた」

「………うわ…なにそれ」

めちゃめちゃ恥ずかしい。

「そんな言葉真顔で言わんで!」

顔から火が出る。そんな慌てる姿をマー兄ちゃんは笑って見つめてた。

でも直ぐに寂しそうになった。


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