あの日の桜が舞う時に
出会いは突然に
坂口遥香(さかぐち はるか)
大学四年生になったばかりの春 -
私は今、新学期になってから、
初めての授業を受けて来たばかりで。
参考書やらノートやらを
リュックに詰め込み立ち上がった瞬間。
机の上で、私の携帯が着信を知らせた。
「え......。」
お父さん...?
滅多に連絡をして来ないお父さんからの
着信に思わず喉を鳴らした。
久々過ぎて緊張する...
大学に入学したばかりの頃に、実家から逃げ出す様に東京で部屋を借りて一人暮らしを始めてから、一度も実家には帰っていなかった。
お父さんの了承無しに勝手に
一人暮らしを決めちゃったし...
まさか、今更になって怒りの電話を
掛けてきたとか...?
まさかね、と思いながら通話ボタンを
押しそっと耳に携帯をあてる。
「も、もしもし...?」
恐る恐る口を開くと、少しの間が
合った後に
『遥香、お母さんが倒れた。
○○病院にすぐ来なさい。』
そう、一言二言をボソリと
呟いたお父さんは私の返事を待たずに
通話を切った。
「え...?お母さんが倒れた?」
突然の身内の不幸に、私は
暫く身動きが取れなかった。