特別課外刑事部 -五人の刑事-
「湊くん、これから話す事は他言無用です。もし少しでも話すような事があれば所罰を受ける事になります」
「それは隠蔽している事を認めるって事ですか?」
鋭く痛い視線を湊くんは私に送ってくるけど、胡桃は机の下で手をギュッと握り締めながら鼓動を落ち着かせた。
「大介の御両親からの願いでもあったんです。しかし湊くんからすれば隠蔽と思われても仕方ありません。大介の死は湊くんが予想しているように水難事故ではありません」
「それじゃあ…」
「ただ、この話を聞いたら引き下がれませんよ。心の中に秘めたまま墓まで持っていてください」
「…覚悟の上です」
やはり、話すしかないのか。
もしかしたら引き下がるかも…って甘い考えを持ってしまったけれど間違いだったね。
「大介の死はアルカナに同化された事により暴走し、被害を減らすべく私が撃ちました」
「…貴女が……?」
湊くんは驚いていた。
そうだよね。
他の誰でもない幼馴染みである胡桃が大介を殺したんだから。
「数週間前、男女関係なしに襲われる暴力事件があった事をご存知でしたか?」
「はい、世間で騒がれていましたから…其れが何か」
「その事件は警察と特課部が連携して捜査していました。捜査をしていく中で囮捜査をする事になり、囮捜査や潜入捜査が違法である刑事ではく、違法にはならない特課部の私が囮になりました。襲われそうな場所を選んで…」
茜色の空から藍色の空に変わっていっていたあの日の景色。人通りが悪くて不気味な場所でもあった。
「そして私の目の前に現れたのは、アルカナに同化された大介だったんです」
「っ!?」
湊くんの体が一瞬震えた。
多分、今の湊くんの鼓動は間違いなく早いだろう。
いくら湊くんでも予想はしていなかったってことなのかな?
「アルカナを倒すのが私、特課部の役目。謎の生命体と言われ人間に害を及ぼす存在…そんなやつに大介は同化されていたんです」
「…大介が、暴力事件の犯人だと?」
「はい。証人もいたことで、幾つか一致した所があり大介を犯人と断定しました」
あの時は、そんな余裕なかったけれど。
「躊躇わなかったんですか?」
「そりゃ躊躇いましたよ。でも撃たないとまた次の事件が発生してしまいますし…それに、大介に頼まれましたから」
「え?」
「”殺してくれ”ってね」
だから、私は撃てたんだ
大介を、この手で。
「自我がまだあったんだと思います。だから私に頼んだんだと思いました」
「撃つ以外に方法はなかったんですか?」