特別課外刑事部 -五人の刑事-
湊くんの声のトーンが低くなり黒く感じた。そうだよね。過去に友達を亡くして、また大介という友達を亡くしたんだから
「保護って方法もありました。ですがアルカナに同化されれば逃れる事は今の段階では出来ません。実験に使われる可能性があります。だから大介の意思を尊重しました」
ここで目を逸らしてはいけない
胡桃はしっかりと湊くんの目を見て全てを話した。
「何か言いたい事ありますか?あるなら言ってください」
とっくに、罵声を浴びせられる覚悟はできているから
「…殺してほしくなかったです」
そう、湊くんは静かに…そして悲しそうに言った。罵声の覚悟はあったけれど、これもかなりキツいかもしれない。
静かにグサッとくる。
「…胡桃さん」
「はい」
「忙しい中今日はありがとうございました。俺なんかに話してくれて」
「…いえ、そんなことは」
「会えて良かったです」
「え?」
「大介の大切な人に」
「…え」
「それじゃあ失礼します。見送りは大丈夫なので」
そう言って取調室1から出て行く湊くんの背中を私はただ見送っただけだった。
体が動かない。
大介の大切な人が…私?
確か大介には好きな人がいた…
まさかっ…。
「…大介っ」
私にとっても大切な人である大介の名前を呟くと、取調室1のドアが開かれた。
湊くんが戻ってきたのかな?と思うと、ボスと仲間たちが中に入ってきた
「頑張ったね、胡桃」
そう言って私の頭を撫でる康くん
恥ずかしいからやめてほしくても、どうしてかそれを言えなかった。
何か言葉にしようとすると目頭がツーッとして目に涙が出てきそうで
「泣いてもいいんだよ、胡桃」
康くんのその一言で緊張していたものがプツリと切れたかのように私は声を上げて泣いた。
まるで、大介を失った
あの日のように…。
そんな私を仲間やボスは優しく見守ってくれていた。