お金持ちなんて大嫌い!
「おい」


そう言って誰かが綾乃さんの頭をノートで軽く叩いた。


「もう、海翔やめてよ〜」


九条……


「ったく。いきなり走るなよな」


「だって〜なんだか結衣子ちゃんに会えたのが嬉しくて!」


「そんなこと言ってるとこれ貸さないからな」


「え?あ、これノート?」


「そ、今まで休んでた分。ちゃんとまとめといたから」


あのノート……


私には見覚えがある。


九条がどんなに桐谷たちが騒いでいても寡黙に授業を聞いてノートをとっていたのは……


たぶん、きっと。


綾乃さんのため、だったんだ。


そっか……


私はその凜とした姿を見て、好きになってしまっていたんだ。


「おい」


やだ……なんか胸が痛い。


「おい、外部」



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