お金持ちなんて大嫌い!
私に微笑むどころか、私の方を見てすらくれないけど……


「じゃあ、また来るね。バイバイ、ネコちゃんと九条……くん」


私は踵を返し、路地を歩き出す。


「待てよ」


その声を足を止める。


振り向くと、九条はしっかりこっちを見つめていた。


「九条でいいよ」


「え?」


「さっきから無理にくん付けようとしてる」


あ……やっぱりぎこちなかったか。


「じゃあ……九条またね!」


「ん、じゃあ」


九条は私の名前なんて知ってるのかな?


一応ハンカチの刺繍で下の名前は知ってるはずだけど……



「桜庭」





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