夢 ~愛する事を教えてくれた貴方へ~


あたしはその声に顔を上げた。

『ぇ・・・ッヒック』

成松は、目を見開き、驚いている。
萌は、勝ち誇ったように笑っている。

「お前・・なんで」

「ずっと、いたよ?ね、蒼井さん?」

『ごめッ、あたし、聞くつもり・・
なかったんだけど・・』

涙が、溢れてくる。
溢れた涙は、頬をつたり、廊下に落ちる。

「どうしたんだよ?」

成松は、冷静。

『何も、ないからッ。』

あたしはそう小さく呟いき、
小さく笑った。

「じゃあッ!!お前は、なんだ泣いてんだよ?」

『・・・なにもないから。』

「ッとにかくッ!」
成松が萌の方を向いて、言い放つ。

『成松・・・さ。』

その言葉をあたしが遮る。

「なんだよ?」

『萌の事、大切にしてやりなよ』

その言葉を聞いた成松は、言葉を失う。

「ほら、成松君?
蒼井さんもこう言ってくれてるんだし・・・?」

萌が笑顔で成松に話しかける。

「うるせぇ。」

成松の冷静で低い声が廊下に響く。
その冷たい声に萌の顔は引きつった。

< 29 / 33 >

この作品をシェア

pagetop