夢 ~愛する事を教えてくれた貴方へ~

玄関を入り、
3階へと上がる。

教室の前で、歩く足がピタッと、止まる。

『・・・ふぅ・・・』

深呼吸をして、教室のドアを開けた。

教室には、成松がいた。
驚いたように目を見開いている。

「お前・・どこ行ってたんだよ?」

大丈夫、後悔しないように・・・。
おばあさんの言葉を思い出しながら、あたしは話し出す。

『成松・・。ちょっと長くなるかもしれなけど、
聞いて・・・』

「・・あぁ、わかった。」

『あたし、やっぱり嫌なんだよ。
成松が、萌のものになるなんて・・・』

成松は黙って聞いている。

言葉が、見つからない。

『・・お前なんか、大嫌いだ。』

「は?」

また、涙が溢れてくる。
あたし・・こんな泣き虫だったかな。

『お前ッなんか、大嫌いグス、だったのに・・』

自分でも、何を言っているのかわからない。

『大嫌いだったのに、今じゃ、こんなに・・
こんなに・・・ヒック。』

カタ。と小さく音をたてて、成松が椅子から立ち上がる。

『こんなに・・・。
あたしは・・お前の事がッ。』

顔をあげた瞬間、暖かい物に包まれた。

「もう、いいから。」


『あたしは・・成松が・・好きなんだ』


「うん。俺も。」

そう言って成松は笑った。

『ぅ・・・』

「どうした?」

成松は慌ててあたしの顔を覗き込む。

『ぅッしゃあ』

あたしは小声で喜んだ。
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