真夜中の訪問者
「あのぉ、私ですが…」
そう、自己紹介が遅れました。
彼方亜理紗と言います。
すると、『棗』は不思議な顔をして、写真を見せながら言い放つ。
『いや、君は彼方亜理紗ではない。君のように、貧乏くさくて、地味で、冴えない人間ではないはずなんだ。』
『棗』が持っていた写真には、私とは似ても似つかない、華やかな雰囲気をまとった、きれいな女性が写っている。
「いやぁ、そう言われても、私が彼方亜理紗ですが…。それより、暑くはありませんか?」
そんな言葉を、無視しながら、写真とにらめっこする『棗』。
『ほんとうに、君は彼方亜理紗なんだろうなぁ。顔をよく見せてみろ。』
あれ?
女の子じゃないよね。
そういわれて、『棗』のほうを向き直し、しぶしぶ顔を見せる。
『棗』の方を見ながら、私は言った。
「何の用事があって来たんですか。用がないなら帰ってください!!」