真夜中の訪問者
パパと呼ばれた男が答える。
『あぁ。』
女の子が、鈴の様な声で聞く。
『男の子?女の子?』
『男の子だよ』
嬉しそうに答える男に、女の子は興味津々に聞く。
『弟だ。お名前は?』
娘にかっこいいところを見せたいのか、威張って言う男。
『もう決まってるよ。』
すると、目をキラキラさせ聞く
『何々?霞(カスミ)に教えて』
ふっと笑って、男は言う
『棗だよ。なつめ。』
『可愛いお名前。棗くん。可愛かったら良いなぁ…』
あの親子の話を聞く限り、
俺は見えない存在なようだ。
しかし、次から次に涙が出て止まらない。
涙が頬を伝い、やや尖った顎から落ちた。
………ポタン………っと