真夜中の訪問者



パパと呼ばれた男が答える。


『あぁ。』



女の子が、鈴の様な声で聞く。


『男の子?女の子?』


『男の子だよ』


嬉しそうに答える男に、女の子は興味津々に聞く。


『弟だ。お名前は?』



娘にかっこいいところを見せたいのか、威張って言う男。


『もう決まってるよ。』



すると、目をキラキラさせ聞く


『何々?霞(カスミ)に教えて』



ふっと笑って、男は言う



『棗だよ。なつめ。』



『可愛いお名前。棗くん。可愛かったら良いなぁ…』




あの親子の話を聞く限り、



俺は見えない存在なようだ。




しかし、次から次に涙が出て止まらない。





涙が頬を伝い、やや尖った顎から落ちた。




























………ポタン………っと















< 86 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop