Polaris
第7章 もう一度、貴方に私を好きになってもらうから。
◇ ◇ ◇
「樹、喜ぶかなぁ」
快晴な晴空の下、私はいつものようにある場所へと向かっていた。
ある場所というのは、東京都内にある大きな病院の一室。樹が入院している部屋のことだ。
私は、コンビニで買った樹の好物であるプリンを片手に、今日は何を話そうかと考えながら歩き続ける。
あの、樹と結ばれた日。そこからもう既に三年が経っていた。
想像以上に早く病状が悪化し、合併症を起こしかけないところまで来てしまった樹は、余儀なく病院へ入院することになってしまった。
もちろん、働いていたJECの工場も退職し、そのタイミングで私も都内の会社に転職、そしてこっちに移住した。
ずっと勤めていたナチュラルファクトリーと離れるのは寂しかったけれど、それ以上に樹との時間を大事にしたかった。
一分一秒でも長く樹の側にいて、樹と一緒に新しい思い出を作りたかった。……いや、樹が忘れられないほどの思い出を作っておきたかったという理由の方が正しいかもしれない。
今の仕事は16時で終えられる事務。終わればすぐに樹のいる病院へ通う。それは、早くも日課になっていた。
病院に入った私は、そのまま樹のいる5階へエレベーターで上がり、廊下を歩き始めた。
樹のいる部屋に近づくにつれ、どんどん高鳴っていく心臓。
毎日、樹の部屋に入る前、私はとても緊張する。もちろん樹に会える事は嬉しいし、その意味での緊張も無くはない。
だけど、この緊張感の理由は他にある。