Polaris
こっちはもう既に夏のような暑さで苦しんでいるというのに、北海道では雪が降ってしまうくらい寒いのか。
ちょっと羨ましいな、なんて。
暑い季節なんかよりは、どちらかというと、寒い秋冬の季節の方が好きな私。
そんな私とは正反対らしいイツキは、ひとり画面越しに嘆いている。
『あぁ、北海道は寒くてつらいよぉ。キョンキョン温めてー』
またふざけた事を言い始めたイツキに、私の顔は少し熱くなる。
きっと、ほんのり赤くなっているであろう私の顔。だが、これもイツキの軽い冗談だということはちゃんと分かっている。
私は「馬鹿言わないで」と冷たく返して、止まっていた足を動かし始めた。
────コツ、コツ、コツ。
『ははは。俺の働いてる会社ね、転勤ばっかでさぁ。それで、今は北海道にいるんだけどね、そろそろ本部とか暖かい地域に転勤にならないかなぁ……なんて思ってて……って……あれ。キョンキョン、もしかして今外にいる?』
「え? あ、うん。そうだけど……何で分かったの?」
『ヒールの音と、風の音、かな?』
キョンキョンはヒールを履いたOLさんなんだねぇ、と呑気に呟くイツキ。その声は何故か嬉しそうで、電話越しでイツキは笑っている、と、そう感じた。