Polaris
顔が見えるわけじゃないのに、イツキが笑っていると分かってしまった。
イツキの顔なんてたったの一度も見たことがない。それなのに、イツキが目尻を下げて微笑んでいるのが想像出来た。
「……何で笑ってるの?」
『え? 分かった? 笑ってるって』
「うん……なんとなく」
『凄いなぁ、キョンキョンは』
くすくす、と画面越しに笑っているイツキ。そんな彼の笑い声を、少し居心地がいいなぁ。なんて思いながら聞いていると、続けてイツキが話し出した。
『キョンキョンはきっと、ヒールの音を鳴らしながら街中や社内を歩いてる、そんな出来るOLさんだろうな、って思ってたから。なんか想像どおりでさ』
「そんなこと想像してたの?」
『ははは。まぁ、ちょっと』
「イツキ、髪型とか体型も当ててくるし…ちょっと怖いよ。ストーカーみたい」
スタイルに、髪型に、肌の色。偶然だとしても、ただの想像だけで全てを当ててくるのだからイツキは凄い。
本当にストーカーだとは思っていないけれど、ほんの少し、怖いくらいだ。