Polaris
「茶色なの? やっぱりチャラいんだ」
『なに!その茶髪イコール軽いみたいな偏見!』
半分冗談で、でも、もう半分は本音だった私のひとことにイツキが食いついた。
イツキは偏見だというけれど、でも、本当の事じゃないだろうか。だって、茶髪のサラリーマンって……どう考えてもチャラいでしょ。
「別に、偏見じゃないよ。でも、まぁ、イツキは黒髪でも茶髪でも軽いしチャラいけどね」
『え⁉︎ なにそれ!キョンキョンは俺の事をそんな風に思ってたの⁉︎』
「うん」
何の迷いもなくイツキの問いに頷くと、彼は『それは心外だなぁ』と、不満そうに呟いた。
「ところで、イツキって何歳なの?」
今更だけれど、私は彼の年齢を知らない。他にもたくさん知らないことはあるけれど、今、なんとなく年齢を聞いてみたくなった。
そんな私の問いに、イツキは唸るようにして悩みだした。きっと、年齢を言いたくないのだろう。
そんなに言いづらいほどの年齢なのだろうか……と更に興味の湧く私の耳元から再び声が聞こえてきた。
『んー……まぁ、仕方ない。ええっとー……実は、この間29歳になった。もうアラサーのおじさんなんだよねぇ。俺』
「え? そうなの?」
『うん。そうそう』
……思ったよりも、若かった。
年上だろうとは思っていたけれど、私と一つしか変わらないんだ。