Polaris
夏目漱石の作品は、どれも好きだ。
代表作と言ってもいい程有名な「吾輩は猫である」から「こころ」「それから」。どれも私好みで、色々考えさせられるような作品。
『おお、奇遇。夏目漱石ねー、実は俺も読むんだよね』
「え、意外」
『ははは、でしょ? よく言われる』
イツキが夏目漱石かぁ……なんか意外。
イツキは絶対に読まなさそうだからオススメしたのにな、とほんの少しだけ残念な気持ちになる。
でもその反面、またイツキと趣味が合ったことに嬉しさも覚える。
『にしても、キョンキョンとは本当に気が合うねぇ。ビックリするくらい』
普通に出会ってたら、付き合ってたかもね?
そう言って、電話の向こうで微かに笑っているイツキ。イツキの言葉に、私の胸はドクンと跳ねたかと思うと突然痛み始めた。
気が合うと言われたことは、素直に嬉しくて。だから、ドキドキした。
でも、普通に出会っていたらなんて例え話は、まるでネットで出会った事を否定されているみたいで苦しい。